(続き)
「その1」で触れた過程1~4のうち今度は「3.間に助詞を補う」について考えてみよう。
初歩的な回文は、次のイのようなサンドイッチ的な構造を持つことが多い。
イ:(名詞1)+助詞+(名詞1をひっくり返した言葉)
助詞にもいろいろあり、一文字の助詞であっても全体の意味を大きく左右する。
例:
イカの会
イカに貝
イカと貝
イカを買い
回文全体がもっと長くなった場合は、使いやすい助詞とそうでない助詞が出てくるが、語数の少ない「名詞+助詞+名詞」の初歩的なレベルでは気にする必要がない。
ところで、日本語ではしばしば助詞が省略される。
「僕は学校に行くよ!」は「僕、学校、行く!」だけでも通じるからである。
このため、回文では辻褄を合わせるための省略が、頻繁に行われている。
回文特有の文の不自然さは、助詞の不規則な省略でほとんど説明できるのではないだろうか。
次に、もう少し別の形を考えてみよう。例えば、
猿、狩るさ(さるかるさ)
のように、中央に助詞が来ないで、
ロ:名詞+動詞+終助詞
のようになるケースもある。
音や平仮名で考えると左右対称だが、
ABCBA
言葉の意味や文法上の区切りとしては、
(AB)+(CBA)
となる。
さらに、
叫ぶ今朝(さけぶけさ)
のように、
ハ:動詞+名詞
で、
(ABC)+(BA)
となる場合もある。
もちろん、動詞ではなく、形容詞や形容動詞が入る可能性もある。
全部で五文字の回文の場合、イ、ロ、ハの可能性を念頭に置いて、
(AB)+C+(BA)型
(AB)+(CBA)型
(ABC)+(BA)型
の三つの型を意識することが重要である。
他に「4字+1字」「1字+4字」型も考えられるが、いずれにせよ型を使いこなすための判断力と柔軟性を養うことが大切で、五文字以上の場合も同様である。
それ以上の長い回文の場合でも、常に単語や意味の切れ目をずらし、改め、移動させる意識を持つべきである。
(初級レベル:終)